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Q&A(離婚前)

離婚全般

​■Question

夫から突然、離婚を切り出されました。こどものことを考えると離婚する気にはなれません。どのように対応したら良いのでしょうか?

■Answer

奥様に離婚をする意思がないのでしたら、離婚に応じる必要はありません。

御主人が家庭裁判所へ離婚調停を申し立てたとしても、その性質は話し合いであり、奥様の意思に反してむりやり離婚させられることはありません。

調停が不成立になった場合、御主人は離婚裁判を申し立てることができますが、奥様に法定離婚原因が無い限り、離婚判決を得られる可能性は低いと思われます。

離婚届を勝手に出されてしまう心配があるならば、奥様が、市町村役場に離婚届の不受理申請をしておくと安心です。これによって、離婚届が受理される事を阻止することができます。6カ月間、有効です。

まずは、何故離婚なのか?その理由をはっきりとさせる事から始めてみてください。

結婚23年という事ですから、相応の理由がある筈です。浮気相手にのぼせているのであれば、冷却期間が必要でしょうし、場合によっては浮気相手に慰謝料請求する(白日の下にさらす)事で、夫の目が覚めるかもしれません。

■Question

​夫の暴力が怖くて離婚を切り出せません。どうしたらよいですか?

 

■Answer

まずは、身の安全の確保が最優先です。暴力が日常茶飯事であれば、最寄りの警察署もしくは市町村役場(相談センター)に相談しましょう。一時的(1~2ヶ月)に退避する為の施設を紹介して貰えます。

身の安全を確保した上で、裁判所に保護命令の申し立てをし、面会禁止などの保護処置を講じて貰います。これによって、万一の際も警察に速やかに対応して貰えます。

離婚話を夫婦間で直接話し合いますと、暴力をあおることにも繋がりかねますので、危険です。できるだけ避けましょう。

協議離婚にこだわらず、家庭裁判所に調停を申し立てることをお勧めします。戸籍へ調停離婚と記載される点を気にされている様ですが、調停が整った時点で、「本調停により離婚する」という形を避け、「○月○日に協議離婚届けを提出する」という形を取ることで、避けることができます。

形にこだわりたい気持ちも理解できますが、何よりもまず、暴力の被害にあわない様、話を進めていくことが肝心でしょう。早期に弁護士へ相談されることを、お勧めします。

 

■Question

都内在住でしたが現在、夫は都内、私は福島県の実家にて別居中です。対応していただけますか。

 

■Answer

勿論、対応させていただきます。

書類作成にあたっては、メールやFAX、電話で内容確認をさせて頂きますので、当事務所との地理的な距離が支障になることはありません。

公正証書の作成についても、当事務所でご支援が可能です。交通費と日当は別途となりますが、ご希望であれば、福島県まで出張いたします。

現在、多少こじれてしまっているとしても、手紙等の書面を通して、時間をかけてやり取りをすることで、お互いに譲歩案が見つかるかもしれません。ある程度の時間(冷却期間)をかけた方が、良い結果が導けるケースも少なくありません。

反対に、既に破綻状態に近く、もはや代理人に交渉して貰う他に手段がないという状況であれば、弁護士に依頼されるしかありません。

 

離婚原因

■Question

夫が浮気をしており、男女の関係にある事を認めました。夫によると、「誘ったのは自分から」と言っています。浮気相手も「強引に誘われて断りきれなかった」と言い、反省しているようです。この場合、私から浮気相手に対して慰謝料の請求ができますか?

 

■Answer

できます。
判例では、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたがどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被つた精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである(最高裁判決S54.3.30)」と述べています。

即ち、浮気相手が誘惑したのか、反対に浮気相手が夫に誘惑されたのか、は問われません。奥様は、浮気相手に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができると言えます。浮気相手は反省している様子ですので、請求の方法は慎重に行う必要があります。

御自分で請求されることも、勿論可能です。しかしながら、浮気相手と直接面接して交渉するのは、感情的な面からも難しいでしょう。折角、相手方が反省しているのに、ちょっとした言葉の行き違いや感情的な衝動にかられて開き直られてしまえば、問題はこじれていくばかりです。

「浮気を中止して欲しい」、「慰謝料を請求したい」というあなたの気持ちを書面に整理し、内容証明で郵送される事をお勧めします。文面はやや柔らかい表現を用いる、反省している点を評価している事を強調して高額な請求は控える、こちらから譲歩案を提示する、などの点に配慮して作成される事をお勧めします。

■Question

夫とは6年前から別居中で、別居後はこれといった行き来はありませんでした。先月、夫が女性と同棲している事を知りました。同棲している女性(浮気相手)に対して慰謝料を請求する事ができますか?

 

■Answer

できません。
判例では、「(夫)が(浮気相手)と肉体関係を持つことが(妻)に対する不法行為となるのは、それが(妻)の婚姻生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということがいえるからであって、(妻)と(夫)との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、(妻)にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとは言えない(最高裁判決H8.3.26)」と述べています。

奥様の場合、婚姻関係の破綻と同棲相手との肉体関係の時期の先後が、争点になります。

「離婚しない理由」や「離婚できない理由」が色々とあるようですが、残念ながら現在の状況は、“別居後の関係が完全に途絶えており、婚姻関係は破綻している”と解されます。

 

従って、婚姻関係破綻後の不貞行為に対する慰謝料請求はできないと言えましょう。

 

 

■Question

夫とは別居して12年になります。別居後、お互いの行き来も無く、その間にこども達も独立しており、私の定年を機に、正式に離婚したいと思っています。私から離婚話を切り出したら、慰謝料をはらわなければなりませんか?

 

■Answer

慰謝料とは、「相手方の不法行為によって精神的苦痛を受けたことに対する損害賠償」を指しています。従って、ただ何となく別居したとか、原因は分からないが別れたいとかの理由であれば、慰謝料は発生しません。

別居期間を根拠に離婚できるのかという点については、判例では、「別居期間と両当事者の年齢及び同居期間を数量的に対比するのみでは足りず(最高裁H2.11.8.)」と述べて、単に別居年数だけの長短で離婚を認めるとはしていません。

 

同居23年・別居8年で離婚請求を認めた事例もあれば、同居21年・別居9年で離婚請求を認めなかった事例もあります。

こうした事例は裁判に訴えた場合ですので、お互いの話し合いが整いさえすれば離婚は可能なのです。協議による離婚においては、「○○を満たしてないから離婚できない」といった制約条件はありませんので、まず、御主人との話し合いを持たれては如何でしょうか。

 

財産分与

■Question

分与できるものと、分与する割合の目安を教えてください。

 

■Answer

分与とは、夫婦の協力で築いた財産を離婚時に清算することです。従って、家財道具、家電品、車、マンションなどの不動産、現金預金、株式などが、その対象となります。夫婦どちらの名義であるかを問いません。

財産分与の対象とならないものは、独身時代の貯金、婚姻の際に実家から支援してもらったお金、相続により得た財産などです。これらは特有財産と呼ばれ、離婚時の財産分与には含まれません。

分与の割合ですが、個々の事案によって異なりますが、基本的には二分するのが目安と言えます。

妻が専業主婦であっても、夫が仕事に専念できるのは妻の支えがあってこそという考え方から、二分される方が多いようです。

問題は、特有財産を婚姻生活の中で費消してしまった場合です。例えば、夫が独身時代に購入したマンションに結婚後も住んでいた場合や、マンション購入に妻の実家から500万円の支援を受けた場合など。

こうした事例での財産分与では、少々複雑になりますが、夫婦間で合意に至りさえすれば、こうしなければならないというきまりはありません。

また、財産を厳密に算定したい場合には、不動産鑑定を経て、時価評価額を算出することもあります。 分割する財産がどの程度なのか合わせて費用対効果を考慮しつつ、夫婦間で話し合われると良いでしょう。

 

■Question

離婚して、3年経ちます。離婚当時、財産分与なんて知らなかったのですが、今からでも元夫に対して請求することはできますか?

■Answerできません。
財産分与については、離婚後2年で消滅時効を迎えます(民法第768条)。

法律は、永続した事実状態を尊重します。民法における時効の制度は、「権利を持っていながらこれを行使しない人を法律は保護しない」という法意の表れであり、「権利の上に眠る者は保護せず」と言われています。

 

■Question

名義の土地に、夫名義の家が建っています。離婚にあたり、家を私の名義にし、私とこどもがその家に住み続けます。どういう手続きが必要でしょうか。

■Answer

既に話し合いが整っておられるようですから、離婚に伴う財産分与として、不動産(建物)を妻に分与する旨の離婚協議書を作成します。

離婚協議書を作成したら、司法書士に依頼して建物の登記名義変更を行います。離婚に伴う財産分与ですから、登録免許税を低く抑えることができます。

離婚協議書は、登記申請の添付書類として使用できますし、離婚に伴う財産分与の証明書類としても使用できます。

記変更が済んでから、離婚届を提出すると良いでしょう。尚、建物について、住宅ローンが残っている場合には、金融機関の事前の承諾が必要です。

 

 

■Question

ローンは夫が支払い続け、財産分与として、家を私に譲渡することはできますか?


■Answer

可能です。ただし、金融機関の事前の承諾が必要です。

承諾なく名義変更した場合には、残債務の一括返還を要求されたり、抵当権を実行される可能性もあります。「住宅ローンは夫が払い続ける」点と「家の名義が夫から奥様に変更になる」点について、事前に相談してください。

将来に対する不安材料としては、夫の支払いが滞った場合、抵当権を実行される可能性があります。

それを防ぐには、住宅ローンの支払いに関して、「支払いが滞ったら強制執行されてもよい」という旨の公正証書を作成しておくと良いでしょう。

執行認諾文言付公正証書というのは、裁判を起こすことなく相手方の財産(預金口座など)に対して強制執行できるものです。公証人役場にて作成できます。

尚、あらかじめ銀行に相談した際に条件を付けられた場合には、それに従う事になります。

 

婚姻費用

■Question

私の浮気が原因で、家を出てしまい6カ月が経ちました。夫は何度謝っても「許さない」の一点張りの為、離婚するしかないと思っています。当座の生活費と慰謝料は、請求できますか?

 

■Answer

別居の原因は奥様にあると思われるため、離婚協議を進める上では大変に不利な立場にあると言えます。 慰謝料請求については、奥様の希望額から譲歩を余儀なくされるでしょう。

生活費については、「婚姻が事実上破たんして別居生活に入ったとしても、離婚しないかぎりは夫婦は互に婚姻費用分担の義務がある」とされておりますので、請求は可能と言えます。

御主人がかたくなな態度を崩さず、離婚が避けられそうにない場合には、少しでも奥様に有利な材料を揃えるしかありません。例えば、奥様から御主人宛てに内容証明郵便にて謝罪と同居に戻りたい旨、申し入れて下さい。

こうした申し入れ自体を拒む御主人には、「同居生活回復のための真摯な努力を怠った」として、離婚協議における反論材料とする事ができます。できれば、時間が経つことで御主人が思い直してくれることを期待したいですね。

 

 

■Question

離婚調停中です。妻から生活費として月額10万円を、その他にこどもの塾代として3万円を要求されています。とても払い続けられる額ではないので、支払いを中止したい。中止が無理ならば、減額したい。可能でしょうか?

 

■Answer

既に紛争状態にある方からの御相談をお受けする事は、できません。

以下は、一般的な情報として御理解下さい。

婚姻費用についての調停という制度があります。婚姻費用の分担は、免れることはできませんが減額を交渉することは可能でしょう。金額については、裁判所の出している婚姻費用算定表を一つの参考とすることができます。

 

 

■Question

夫が浮気相手と同棲しており、この度、離婚する事にしました。マンションのローンが月々6万円程あるのですが、生活費とこどもの養育費とは別に、請求する事ができますか?

 

■Answer

非常に大雑把ですが、婚姻費用とは、結婚生活に於いて必要となるお金のことと御理解下さい。生活費といった表現の方がピンとくるでしょうか。

まず、夫との別居が始まった時点から離婚に至るまでの期間に於いて、ローンを婚姻費用に含めることができます。従って、離婚の協議に於いては、全額の請求が可能です。

婚姻費用に関しては、裁判所の出している婚姻費用算定表を一つの参考とすることができます。夫がサラリーマンか自営業か、こどもの年齢や人数などに応じて、目安となる金額を求めることができます。

尚、別居開始から離婚成立までの期間におけるお金の清算と、離婚に伴う財産分与、離婚後の養育費負担等については、それぞれ分けて考えませんと協議に於いて混乱しかねませんので、ご注意ください。

 

親権

■Question

親権者でもめています。夫は、夫の父母と一緒になって私には養育上の不利があると責めます。私の父母は既に他界しており、日中は保育園に預けて働くしかありませんし、経済面での不安も確かにあります。親権者が決められない場合、どうしたら良いのでしょうか?

 

■Answer

親権は、夫や妻の「親権を取りたい」「親権を取られたくない」といった主張で決まるものではなく、こどもの福祉が判断の基準となります。

例えば、生後間もない乳児の場合、夫は母乳を与えることができませんから、母が親権者となった方がこどもは幸せです。反対に、母が育児放棄している場合には、父が親権者となった方がこどもは幸せです。

この様に、こどもの福祉を判断の基準とします。保育園児という年齢では、一般的には母が親権者となる場合が多い傾向にあります。

親権者でもめている理由は何でしょうか? 配偶者に対する単なる意地の張り合いではありませんか?

御主人が離婚後の奥様の経済的な不安を理由としているのであれば、相応の養育費を負担する事がこどもの幸せに繋がると、反論しましょう。御主人の父母が健在である、だから日中こどもの面倒を見てあげられるという点を理由としているのであれば、御主人より奥様の方がこどもと接触する時間が長いこと、祖父母より母との接触がこどもの福祉に貢献すると、反論しましょう。

どうしても協議が整わない場合には、家庭裁判所へ親権者指定の調停を申し立てることができます。調停は、家庭裁判所で行われますが、あくまで話し合いの性格を有するものです。

調停委員が双方の話を聞き、調停案を提示してくれます。お互いが合意すれば、調停調書に記載された内容は確定判決と同様の効力を有します。

また、面接交渉権についても忘れてはなりません。

あなたが親権者となった場合には、どれくらいの頻度で、どれくらいの時間、どこで元夫とこどもを面会させるのかを決めておく必要があります。スムーズな面接交渉は、養育費の支払いなどにも心理的な影響を与えますので、相応の配慮が必要です。

保育園児という年齢ですから、当面の間は母親同席とされることを、お勧めします。尚、御主人の父母には面接交渉を請求する権利はありませんが、こどもがなついている等の事情がある場合には御主人との同席を許す等、奥様の譲歩が必要となる場合もあります。

 

 

■Question

親権について、夫と話がまとまりません。折衷案として、親権者を夫、監護権者を私に決めようと思っています。そうした場合、将来、どのような問題がありますか?

 

■Answer

親権と監護権を分属した場合には、分属しない場合に比べて、様々な問題が生じる可能性が高くなることは避けられないと言えます。

離婚届には親権者の記載覧しかありませんので、監護権の定めを書面に残していない場合は、父親が親権者として子の引き渡しを求めた場合、対抗手段がない恐れが生じます。

法定代理人は親権者となりますので、戸籍の移動などは親権者が行います。母が再婚した場合に、こどもと再婚相手を養子縁組させるためには、親権者の同意が必要となります。

元夫が同意しない限り養子縁組はできませんので、再婚した相手方をも巻き込んだトラブルへ発展しかねません。

こともが未成年者のうちは、学校等の重要書類では、親権者の署名を求められることもありますし、携帯電話を契約する際には、親権者の同意が必要となります。

夫婦間の意地の張り合いで親権と監護権を分属することなく、こどもの福祉を最優先して、冷静に対応されることをお勧めします。

 

 

■Question

夫婦喧嘩の勢いで、「親権は夫に譲る」と言ってしまいました。こどもは3歳4ヶ月です。今更取消すことはできないのでしょうか?

 

■Answer

頭に血がのぼった状態での発言ですから、直ちに、撤回しましょう。お二人が冷静な状態で話し合える時間を持ちましょう。その上で、親権を確保したい旨、話し合ってください。

話し合いが整わない場合、または御主人が話し合いに応じない場合には、家庭裁判所へ親権者指定の調停を申し出ます。こどもの年齢を考慮すると、奥様が親権を取得できる可能性は高いと言えます。

御主人が奥様に無断で離婚届を出しそうな危険性がある場合には、市町村役場にて不受理申請をしておくと安心です。

 

 

■Question

家を出てしまったのですが、子供の親権に影響はありますか? こどもは夫と同居しています。

 

■Answer

別居したからといって、子供の親権を失うということはありません。

離婚しない限り、夫婦共同親権が原則であり、別居が長期に及んだとしても、親権が消失することはありません。

一方で、離婚を前提と捉えていらっしゃるのであれば、長期間に渡って夫とこどもが一緒に暮らし安定した生活を送っているとなると、親権を争うことは難しくなると言えます。

別居は夫婦間の問題であり、こどもの親権とは別の問題ですが、別居が原因で離婚に至ったのか、別居する前の原因で離婚に至ったのかによって、慰謝料、婚姻費用、財産分与、親権の話し合いに影響を与えることもあります。

 

養育費

■Question

小学生のこどもが二人おります。離婚後は、当然に夫から養育費を取りたいと思っています。養育費の額は、こども一人あたりいくらですか?

 

■Answer

いくらでなければならないという法律はありませんので、協議によって決めることができます。目安として、裁判所や弁護士会が作成した「養育費算定表」が広く活用されています。

一般的には、子供一人当たり月3~5万円程度が多いようですが、親の年収その他によって変動します。

養育費は額面の他に、こどもが何歳になる迄支払うのか? 支払いの方法は? 不払いが生じた場合の担保をどうするか?等、取り決めておかなければ後々のトラブルに発展する要素を多く含んでいます。

検討すべきポイントを列記しますので、参考としてください。(以下略)

 

 

■Question

親権でもめています。妻は親権を絶対に渡さないとの主張を曲げる気配がなく、私の方が折れようと思っています。しかし、妻に親権を渡すなら養育費を払いたくありません。離婚協議書には、どのように書いたら良いか教えて下さい。

 

■Answer

まず、養育費請求はこどもの権利ですので、夫婦間の権利・義務とは別物とご理解ください。

「夫は養育費を支払わない」という内容で合意(養育費の放棄)をした場合、夫婦間においては、法律上有効な契約として成立します。

しかしながら、夫婦間の養育費放棄の効果は子供には及びません。つまり、子供が父親に養育費を請求した場合は、父親は子供に養育費を支払わなければなりません。

実際には、母親が子供の代わりに養育費請求権を父親に対して行使することになります。父親からすると、「離婚協議で養育費を支払わない事で合意したじゃないか」と反論したくなるでしょうが、養育費請求はこどもの権利ですので、夫婦間の合意とは別物です。

更に、こどもの権利は法律で手厚く保護されています。通常、自己破産すると、それまでの債務は免責され払わなくて良くなるのが原則です。しかし、たとえ自己破産しようとも、養育費の支払いを免れることはできません。

御主人の場合、妻に親権を渡す代わりに養育費を払わないという合意は夫婦間では有効ですが、こどもからの請求を拒む事はできませんので、事実上意味のないものと言えます。

従って、支払い金額や支払いの方法で負担を減らす策を検討されたり、親権を渡す代わりに慰謝料を払わない等の交渉に進められることをお勧めいたします。

 

面接交渉権

■Question

夫の暴力が原因で、離婚を考えています。夫は「離婚後は月1回はこどもに会わせろ」と言っていますが、離婚後は絶対に会わせたくありません。こどもは5歳になります。離婚協議書を作成しているので、「面接を認めない」としたいのですが、問題ありませんか?

 

■Answer

面接交渉権とは、離婚により子と同居していない親がその子に会う権利及びこどもが親に会う権利です。こどもの権利でもありますので、監護者の一方的な希望で面接を希望しているこどもを阻止することはできません。

また、別居親からの要求に対して、同居親は、その子の福祉を害する(虐待されるなど)ことがない限り、拒否することができません。

相手方との話し合いが整わない場合、家庭裁判所に「子の監護に関する調停」を申し立てる事をお勧めします。奥様の場合、「夫に面接交渉を認めない」と認められる可能性は高いと言えます。

御主人の暴力の程度によっては、保護命令や退去命令も視野に入れておく必要が考えられます。まずは家庭裁判所の調停を利用される事をお勧めします

 

 

■Question

離婚後は、こどもを引き取って実家(長野)に帰るつもりです。夫は都内に残るでしょうから、面接交渉は長距離移動となり、交通費が負担になると考えています。こどもは私が引き取るのですが、交通費を夫に支払ってもらうことは可能でしょうか?

 

■Answer

面接交渉に要する費用負担割合は、こうしなければならないという決まりはありませんので、夫婦間で自由に決めることができます。

離婚後のお互いの経済状況を考慮しつつ、毎月の養育費とは別に交通費を取り決める、交通費相当額を財産分与に含める、面接交渉の回数を減らす代わりに1回あたりの時間を伸長する、交通費を負担したときは宿泊面接を認める等々、お互いに譲歩できる範囲での解決策を模索されては如何でしょうか。

他には、手紙、写真、ビデオ、学校での出来事や成績表のコピー、図画工作等の作品の写真を定期的に郵送するなど、こどもの成長状況に応じて元夫に伝達することも、間接的な面接交渉方法として有効と言えるでしょう。

最近では、パソコンを使ったテレビ電話も安価で利用できるようになっています。直接的と間接的面接交渉を、上手に組み合わされる事をお勧めします。

 

Q&A(離婚後)

親権

■Question

離婚した際、親権者を夫、監護権者を私に決めました。私の再婚に伴い、こどもを再婚夫と養子縁組する事にしましたが、元夫が同意しれくれません。どうしたら良いでしょうか?

 

■Answer

法定代理人は親権者となりますので、こどもの戸籍移動は親権者が行います。

満16歳ならば養子縁組について親権者の承諾は不要(民法797条)ですが、奥様の場合、こどもと再婚相手を養子縁組させるためには、親権者の同意が必要となります。即ち、元夫が同意しない限り養子縁組はできません。

養子縁組の同意は、あくまでも話し合いで解決する事をお勧めします。理由は、離婚協議書を作成されていないという事ですが、監護権の定めを書面に残していない場合は、父親が親権者として子の引き渡しを求めた場合、対抗手段がありません。最悪の事態を避けるためにも、十分に話し合われる事をお勧めします。

話し合いの方法ですが、直接、当事者のみで話し合いを進めるのが困難な場合には、親権変更の調停をお勧めします。調停とは、裁判所で話し合うことで、裁判ではありません。

第三者の力を借りる事で、冷静に和解策を探ることができるでしょう。裁判ではありませんので弁護士を頼む必要もありませんし、費用も数万円程度です。

 

養育費

■Question

離婚後、こどもが20歳になるまでの養育費を支払っています。先日、大学受験のために予備校の費用を新たに負担するよう、元妻から請求されました。予備校の費用まで、負担しなければなりませんか?

 

■Answer

御主人の経済力も考慮しなければなりませんが、一般的には負担しなければならないと言えます。

判例では、「教育に関する費用であっても、その内容が社会生活上一般的に是認される範囲を超えた場合又は金額が不当に高額である場合には、(父親)にその支払いを求める事が信義に反し権利の乱用に該当する事があり得ると解されるが、大学進学希望者らが受験準備のために予備校を利用する事は世上一般的に行われている事であるから…(略)…目的及び内容において是認される範囲を超えたものとは認めらず…(広島地裁H5.8.27)」と述べており、大学受験のための予備校費用は是認される範囲と判断しています。

 

 

■Question

養育費を請求しないことを条件に離婚に応じ6年が経過しましたが、今になって養育費を請求されました。私は養育費を支払う必要がありますか? 時効を理由に、支払いを免れることはできませんか?

 

■Answer

必要があります。

親はこどもを養育する義務を負っており、こどもは親に対して扶養してもらう権利を有しています。

こどもの扶養請求権を、親だからという理由で勝手に処分することはできず、離婚時に夫婦間で交わされた養育費の請求権を放棄するという約束は、無効となります。従って、支払いを免れることはできません。

また、お子様の「養育費を請求し得る地位」は、時効にかかることがありません。

従って、6年が経過していたとしても請求は有効です。請求期間ですが、一般的にはこどもが成人するまでまたは大学卒業までとされています。

 

 

■Question

養育費を貰っていた元夫が、事故で死亡しました。元夫は再婚しているのですが、再婚妻へ支払い請求したところ拒否されました。どのようにしたら、支払ってもらえますか?

 

■Answer

の死亡により、元夫の養育費支払い義務は消滅します。

養育費支払い義務は、元夫の一身に専属しているものであって、相続対象とはなりません。従って、再婚妻へ相続されませんので、あなたの請求に応じることは無いでしょう。

こどもは父の相続人になりますので、再婚妻と協議されることをお勧めします。負の財産(借金)の方が多い場合には、相続放棄することができます。

 

 

■Question

再婚した夫が亡くなりました。その後、夫の前妻が現れて、夫と前妻との間の子どもの養育費の支払いが滞っているので払ってほしいと言ってきました。夫は亡くなってしまったのですが、替わりに私が支払わなければならないのでしょうか?

 

■Answer

と前妻との間で交わされた離婚協議書は、契約です。そして、御主人が亡くなった時点でこの契約は終了しています。従って、奥様は、養育費を支払う義務はありません。

更に、養育費や慰謝料は一身専属的(特定の人のみに専属し、他の人へは移転できない)ですので、相続することはできません。

例え、奥様が御主人の相続人であったとしても、相続できない内容である以上、何も相続していない事になります。従って、奥様は、前妻のこどもへの養育費支払い請求に応じる義務を負いません。

 

 

■Question

こどもを引き取った元妻が再婚しました。再婚夫と養子縁組もするそうです。現在、養育費を支払っているのですが、今後も支払い続けなければならないのでしょうか?

 

■Answer

費の支払いを免れる事はできませんが、減額できる可能性があります。

判例では、「養子制度の本質からすれば、未成熟の養子に対する養親の扶養義務は親権者でない実親のそれに優先すると解すべきである」(神戸家裁H112.9.4.)と述べており、御主人よりも再婚夫の扶養義務が優先すると判断しています。

仮に、再婚夫の収入が御主人と同等程度であるならば、御主人の実質的な養育費負担は発生しないと言えます。

 

面会交渉権

■Question

3年ほど前に、こどもを連れて離婚しました。元夫とこどもは、月に1回の面接をしてきましたが、私の再婚が決まった為、面接の回数を半年に1回位に減らしたいのですが、可能でしょうか?

 

■Answer

元夫は、離婚協議書に記載がある旨を根拠として申込に応じない様子ですが、再婚による事情変更が認められますので、回数を減らすことは可能です。

奥様の場合も、「新しい家族関係を確立する途上にある」事を理解してもらい、「こどもの心情や精神的安定に悪影響を及ぼす事態はできるだけ避けたい」旨、元夫と十分に話し合い、理解してもらう事をお勧めします。

再婚夫とこどもが養子縁組をされる場合には、尚更です。元夫の面接交渉権については、再婚夫とも十分に話し合い、お互いに譲歩しながら策定しなければなりません。

元夫についても、感情の赴くままに面接交渉を繰り返すことは、親権者による監護養育を阻害し、こどもの精神的安定に障害を与えると解され、最終的には面接交渉を認めないという判例(福岡高裁H15.11.28)もあります。事情変更を理解してもらい、変更した面接交渉権は必ず文書に残してください。

 

 

■Question

元夫は、月に1回の割合で子供(12歳)と面接交渉しています。最近、こどもが元夫と会いたくないと言い、これを元夫に伝えたところ、逆切れされ暴力を振るわれました。私としては、こどもが拒否している以上、無理やり面会させたくは無いのですが、拒否することはできないのでしょうか?

 

■Answer

面接交渉権の性質は、こどもの監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方、人格の円満な発達に不可欠な良心の愛育の享受を求める子の権利としての性質をも有するものとされており、「正当な理由」もなく妨害することはできません。

奥様の場合、「こどもが元夫に対して強い拒否的感情を抱いていて、面接交渉が、子に情緒的混乱を生じさせ、子と監護権者実親との生活関係に悪影響を及ぼす等の子の福祉を害する恐れ」に相当し、正当な理由に該当すると解せられます。

従って、いやがることどもを無理やりにでも面接させなければならない義務を負わないと言えます。ただし、元夫には、きちんと説明しなければなりません。

元夫がどうしても話し合いに応じない場合には、速やかに家庭裁判所に面接交渉の調停を申し立てます。話し合いがこじれたまま面接交渉を拒否し続けていますと、元夫からあなたが面接交渉を妨害していると逆に訴えられかねません。

話し合いにならないと思ったら、速やかに調停を申し立てることをお勧めします。

 

 

■Question

こどもが成長し、自分の携帯電話を持つようになりました。メールのやり取りをしていたところ、元妻より「メールでの面接交渉は認めない」と一方的に通知されました。離婚協議書には、メールに関しては何ら取り決めがないのですが、どう反論したら良いですか?

 

■Answer

二つのケースを想定して、回答させていただきます。

まず、父母間の対立もなく、通常の面接交渉が円滑に進んでいるという場合

判例では、「子の年齢(中学2年生)、その他心身の成長状況からして子が単独で非親権者と面接交渉する事が可能である場合にあっては、親権者親が反対であっても、面接交渉によって子の福祉が害される恐れは比較的少ないといってよく、非親権者親が不当な動機に基づき面接交渉を求めれているような場合を除き、原則としてこれを肯定する事ができる(横浜家裁H8.4.30)」と述べています。

従って、こどもの年齢によっては、通常の面接交渉に加えて、メールでのやり取りを求めることが可能でしょう。

通常の面接交渉が円滑であること、こどもの成長状況から判断して、メールでの面接交渉が害とはならないこと等を理由として、合わせてメールの頻度、回数制限、触れてはならない議題などの譲歩案も用意し、元妻に申し入れては如何でしょうか。

一方で、父母間の対立が激しい場合や、通常の面接交渉に関して元妻の反対が強い場合

裁判所は「親権者親の意思に反する面接交渉が強行されることにより親子間に感情的軋轢等が生じ、これによって子の福祉を害する事態が想定されるから、特別の事情が存在すると認められるときでない限り、これを回避させるのが相当」と解し、先のケースとは結論が異なります。

 

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