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公正証書とは?

「和解契約書」のように一般人の間で取り交わされた文書を私署文書と呼びます。これに対し、公務員により作成される文書を公文書と呼びます。公正証書は、公文書の一種です。

弁護士、検察官、裁判官などの法律職を30年以上経験し、法務大臣により任命された公証人と呼ばれる人により作成される、当事者間の法律行為や私法上の権利に関する事実について作成される文書です。

 

公正証書の作成にあたっては厳密な手続きが必要ですが、私署文書にはない優れたメリットを有しています。

 

公正証書のメリット

メリット1 非常に強力な証拠能力がある

例えば、公正証書に「慰謝料を支払う」旨を記載する場合には、支払ってもらう者と支払う者が公証役場に出向き、公証人の前で供述しなければなりません。

 

聴取した公証人は聴取内容を確認させ、内容に間違いがない事を確認します。

公正証書は、このような厳密な手続きを経て作成されるため、後日、言った覚えがないとか知らないといった事を主張したり、改ざんや偽造を主張しても、裁判で認められることはまずません。

メリット2 執行力がある

私署文書を根拠として相手方の財産を差し押さえる為には、まず、文書を証拠として裁判所に訴えて判決を得たうえでなければ強制執行する事ができず、手間と時間を要します。

 

仮に、相手方の家に乗り込み、「慰謝料を払わないなら、こいつをもらっていく」と物品を押収したとしたら、あなたの犯罪が成立してしまいます(自力救済の禁止)。

 

ところが、公正証書に“約束を履行しない場合には、強制執行を認諾する旨(強制執行認諾約款)”が明記されていれば、いちいち裁判を起こすことなく、直ちに強制執行が可能となります。

その場合、強制執行は裁判所が行います。

メリット3 安全です

内容の安全

公証人がその内容について法律に違反していないかを確認する為、法律違反や公序良俗違反を理由として無効になったりする可能性が極めて低く、内容の安全性が保障されていると言えます。

保管の安全

公証役場に謄本が20年間保管されますので、この間は勝手に内容を書き換える事ができません。保管期間中は、いつでも写しを発行してくれるので、万一紛失したとしても安心です。

しかも、無料で保管して貰えます。

メリット4 心理的な圧力

法律的効果と異なり、その派生としての事実的効果、いわば目に見えない効果が期待できます。

メリット1に示すように証拠能力が強力で、加えて、メリット2に示すように約束を守らなければ強制執行されてしまう訳ですから、公正証書を作成した当事者は、「守らなければ」という心理的圧迫を受け続けることになります。

結果として、約束事が守られるという効果を得る事が期待されます。

公正証書の活用例

事例1 離婚協議に於いて、こどもの養育費支払いに合意したとき

例えば、離婚時5歳になるこどもを抱えている場合、20歳までの実に15年間も養育費を払い続けなければなりません。

口約束だけでは、離婚した相手方がきちんと支払ってくれるという保証は何もありません。

 

仮に、支払いが滞ったとしても、最悪の場合には泣き寝入りすることになり、こどもが親の紛争の犠牲となってしまいます。

こうした将来の不測の事態を避けるためには、離婚協議書を公正証書化しておくと安心です。

 

別れた相手方との紛争を蒸し返すことなく、あなたが公正証書に基づき裁判所に請求すれば、裁判所があなたに代わって、相手方の給与を差し押さえる等の強制執行をしてくれます。

 

また、相手方も「支払いが滞ると差し押さえられる」との心理的圧迫を受けているため、きちんと支払いに応じてもらえる高い可能性が期待できます。

事例2 浮気相手への慰謝料請求で、相手方が支払いに応じたとき

例えば、夫の浮気相手に妻が慰謝料を請求した場合、浮気相手が一度は支払いに応じたとしても、後日「やっぱり払わない」「払いたくない」と心変わりする事は良くあることです。

 

一度払うと約束したことについて払わないと言ってくる相手方ですから、たとえ和解協議書を作成していたとしても、「書いた覚えがない」「無理やり書かされた」等としらを切るかもしれません。

 

一般的には、浮気がバレた時点で反省するものですが、このように開き直ってしまう大物(?)もいます。

こうした相手には和解協議書作成と同時に、和解協議書を公正証書化しておきます。

 

そうすることで、相手方はもはや言い逃れることはできず、また、慰謝料の支払いがなくとも裁判を起こすことなく、相手方の預金口座を差し押さえる等の強制執行が可能になります。

事例3 遺言をしたいとき

例えば、夫が自宅で内縁関係にあり、妻は家をでて既に10年がたっているが離婚はしていないという場合、夫が死亡するとその自宅は妻が相続することになり、内縁関係にある者が相続することはできません。

 

この場合、生前、夫が「この自宅はお前に譲渡する」と言ったとしても、内縁関係にある者がそれを証明しなければなりません。更に、妻や子供などの相続権を有するものが裁判所に於いて、その譲渡を承諾しなければなりません。金額の多寡によらず、容易に承諾しないであろうことは想像に難しくありません。

 

こうしたケースでは、夫が内縁関係にある者に対して譲渡する旨の遺言を公正証書化しておくと、相続開始後、直ちに内縁関係にある者に自宅の登記手続きが可能となります。

 

この例のように、婚姻関係が事実上破たんしていたとしても、離婚が成立していない以上当然に妻は相続権を主張してきますし、財産をめぐっての確執は、積年の恨みを伴って想像を絶するものがあります。

 

夫が内縁関係にある者に対して「この自宅だけでも確実に残してやりたい」と本気で願うのであれば、公正証書遺言は必須条件であると言っても過言ではないでしょう。

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